親子でたどる子育てのあしあと

2016冬、待望の第一子が誕生しました。周りに子育て中の友人がいなかったため、子育て準備は夫やわたしの母と手探りで進めていました。ベビーベットとベビーバスは短期間しか使わないから、どうしようか・・・と考えていたところ、母が「あなたが使っていたものがある」と教えてくれたのでした。

ベビーベットは祖母の家にありました。もう20年以上前の年代物だけれど、壊れたところはなく、とてもきれいなままでした。妹もそのベットに寝ていたのを覚えています。

地下の納戸から数十年ぶりに出されたベットを、「赤ちゃんが気持ちよく眠れるようにね」と叔母がていねいに拭いてくれました。天板の裏には、ベットを使ったわたしたち姉妹といとこの6人の名前と生まれた日が達筆な祖母の手によって記されています。その一番に下に、娘の名前と生まれた日を母が書いてくれました。これで○○ちゃんも仲間入りだね、と。

ベビーバスは、妹やいとこ、親戚、母の友人や同僚の子どもたちも使いました。

いったい何人の赤ちゃんがこのベビーバスのお世話になったのでしょう。「あのベビーバス、今はどこにあるんだっけ?」「あれはー…」なんて会話をしょっちゅうしていたのを覚えています。それでも色褪せず今でも現役。お風呂の栓にはプラスチックでできたおもちゃのリングがつけられていて、「最初はお風呂のチェーンをつなげておいたらね、あなたが足で引っ掛けてお湯を全部抜いちゃったの」「二人ともお風呂が大好きで、お湯につかると口がホーっとなっていて嬉しそうだったよ」とまるでついこの間の出来事のように笑って教えてくれました。そんな小さな部品ひとつひとつに、大切な思い出が込められているのです。肌着、哺乳瓶、タオル、おむつを準備しながら、父と母の子育てを親子でたどる楽しみがありました。

ある日娘を連れて実家へ遊びにいくと「こんなのあったよ」と小さな服を出してくれました。赤いチェックの襟付きシャツとオーバーオール。どちらもわたしが赤ちゃんの時に祖母が手作りしてくれたもので、これだけはおさがりに回せなかったと母は言います。オーバーオールはコーデュイロイ地と花柄のリバーシブル、股のところにスナップボタンがつけられています全部脱がせなくてもおむつを替えられるようになっていて、かわいいだけでなくとても便利です。今ならわかる、祖母の気遣いと愛情に嬉しくなりました。娘がたくさん歩くようになった夏、私もワンピースやカボチャパンツをたくさん作りました。娘は「○○のわんぴーす、にあう」と喜んで着てくれています。一人でお着替えするときに間違えないようにボタンや飾りを付けました。

娘が少し大きくなったころ、時間があるときにビデオテープをDVDにダビングしてほしいと頼まれました。古い8mmビデオを再生していてとても驚きました。

幼いわたしの泣き声や笑い声とそれにこたえる母の声が、今の娘とわたしにそっくりだったのです。それに気づいたとき、涙がぽろぽろとあふれ、とてもあたたかい気持ちになりました。

さらに、わたしに話しかけるとワントーン高くなる父の声と娘をあやす夫の声もなんだかよく似ていて笑ってしまいました。

2歳になった娘は、わたしが今の娘くらいのときに着ていたコートがお気に入りです。ようやく丁度着られるようになりました。外へ出かけるときは「このじゃんばー、きたい」と言って着せてとせがんできます。我が家には娘のものがたくさんあります。わたしが小さい時に読んでいた絵本、遊んでいた積み木やおもちゃは父と母が大切にとっておいて、娘へと渡してくれたものです。そして、わたしが生まれたとき、「この絵本はあなたのお気に入りだったよ」「この服を着てこんなところに遊びに行ったよ」とわたしたちの子育てのあしあとを一緒にたどることができたらいいなと思います。

by 2歳の娘さんを持つ母

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