絵本専門士のえほんのはなし。~その5「絵を読む」ってなんだろう~

みなさん、こんにちは。絵本専門士の水野有子です。今回は「絵を読む」についてのおはなしです。

優れた絵本には、「絵を追うことでおのずから物語の筋が読み取れる」という要素が備えられています。絵のディテールを読んで楽しむ能力に長けている子どもたちが、文字の読める読めないにかかわらず絵本を眺め、その世界に入り込むのはそのためです。

一場面に絵と文字があった場合、文字を読める人は反射的に文字を追ってしまいます。それに対して文字を読めない(読まない)人は、読み聞かせの際、文字の情報を耳から受け入れつつ絵に集中しているので、絵から得る情報量が格段に多くなります。子どもたちは読み手が文字を読んでくれることを知っています。だからこそ視線は絵だけに集中し、すみずみまで絵を読んで、たっぷりとその世界に浸るのです。

何度も読み聞かせして自分自身も慣れ親しんでいる絵本なのに、子どもの指摘で「こんなところに○○が描かれていたの!?」と驚いた経験はありませんか?それが如実に表れるのが、最初の刊行から28年経ってなお幅広い世代から支持されている「バムとケロ」シリーズ(島田ゆか 作、文溪堂、1994~2011年)です。

几帳面でしっかりものの「バム」といたずら好きの「ケロ」の日常の一コマを切り取った愛らしいストーリー。そんななか目にとまるのがサブキャラクターの存在です。メインストーリーのそばで作品をまたいで展開する彼らのサイドストーリーは、探し絵要素も加わって読者の「お楽しみ」のひとつとなっています。

このシリーズを読み聞かせする機会があったら、ぜひ聞き手の視線を意識してみてください。10人いればひとりふたり、明らかに別のところを見ていることに気がつくはずです。前のページに出ていたサブキャラクターを今開いているページに探していたり、これから登場するサブキャラクターの展開を見逃してなるものかと驚異的な集中力を見せてくれたり。絵を読むことに長けた子どもたちの観察眼を目の当たりにすること間違いなし!「さっきのページに戻って!」と言われることもしばしばですが、おはなし会など読み聞かせを中断できない場面でないかぎり、ぜひその子の気がすむまで対応してあげてくださいね。

「絵を読む」というスキルを鍛えたければ、まずは“字のない絵本”に触れるのもおすすめです。字のない絵本はたくさんありますが、その中でも特におすすめなのが『なみ』(スージー・リー 作、講談社、2009年)。両親と海水浴に来た女の子の様子が描かれているこの作品は、横長の版型にひとつの場面を描いていながら、ストーリー展開は左右別々です。「本」という形態そのものを活かした特徴的な波の動きや、一部分だけに色付けされた〈視覚的なしかけ〉がとても効果的で、「絵が語ることば」を存分に感じられるでしょう。おはなしの中でどんなセリフが飛び出しているのか、子どもたちと一緒に考えてみるのも面白いですね。

次回のテーマは【「読み聞かせ」ってなんだろう】です。お楽しみに!

筆者の紹介

絵本専門士 水野 有子さん

絵本専門士4期 十勝在住
十勝初にして唯一の絵本専門士。
3つの公共図書館勤務を経て、現在は帯広大谷短期大学附属図書館に勤務。司書を務める傍ら、知的財産管理技能士や福祉住環境コーディネーターなどの資格も取得。
休日を利用し、私設移動図書館「えほんマイクロライブラリー」で地域に絵本を届ける活動をしている。

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